ヤギの放牧始める

冬の間、ヤギたちは、ヤギ小屋とヤギ庭で過ごしていた。
せっせと、人間がエサを運び入れて生きながらえていた。

山にヤギの食べられる草がなくなるわけではなく、大量にあるのだが、ヤギを繋いでおいて一日中食べることのできる量ほどない。
本来であれば、放し飼いにして自由に動いて食べさせることができればいいのだが、自由にさせるとどこまで行ってしまうかわからないことが問題なのだ。

僕自身が、ハイジに出てくるペーターのように、ヤギの放牧場所に一日中いれば、ヤギも遠くへ行ってしまうことはないのだが、ヤギたちだけを置いていかなければならない。
その場所に、大量の美味しい草があれば、ほとんどの場合、そこから動かず、夕方になったら勝手にヤギ小屋に帰ってくると言う賢い習性を持っているのだが、その場に美味しい草がなくなってくると、美味しい草を求めて旅立ってしまうのである。
さらに、人を頂点としたコミュニティーになっていて、人に着いていくと言う習性もあるので、誰かが来ると、その人に着いて行ってしまう。

この山の所有面積は、5万6千坪あり、その周辺の山々まで自由に歩けることを考えれば、30万坪程度はヤギが移動しても良い範囲があるが、それでも、麓に降りて行ってしまう。
山は、木々が生い茂り、なかなか美味しい草がない。
その点、山を降りて行って、人が開拓した場所には、美味しい草がたくさん生えている。
そのため、自由にさせると、どんどん、山を降りていってしまうのである。

と言うことで、本当に、ヤギを自由に放牧させるのであれば、山の木々を伐採して、草原を作ってやらねばならない。
さらに、面積は10万坪くらいは必要になるし、畑や建物に入らないように囲いをしなければならない。
そう考えると、ヤギを自由に放牧させると言うことは無理っぽいと言うのが、僕の現在の結論である。

それはさておき、春である

うちの山には、大きく開いた場所があまりなく、僕が開拓した場所には、まだまだ草は生えていない。
なので、この春先には、900mほど降りた場所にある炭焼き小屋の草原で草を食べさせる。

数日前から、軽トラの荷台にヤギを乗せて、朝と夕方、炭焼き小屋までドライブする。
そして、長いロープを張り、そこに短いロープを取り付けてヤギをくくる。
そうして、長いロープの範囲内を移動できるようにしてやるのである。

とりあえず、夕方まで腹いっぱい食べてもなくならないほどの草の量がある。
なので、ヤギたちは、朝と夕方では、倍くらい腹の大きさが違うほどに食べる。

食べた草が、肥料になり、僕の野菜を育てるのである

たっぷりと食べた草は、当然、その場でもうんこをするが、多くは、夜、ヤギ小屋に戻ってから排出される。
ヤギのうんこは、人間や犬のうんこのように『いかにもウンコ』ではなく、コロコロとした黒い豆粒で、割ると、細かく粉砕された草の塊でできていることがわかる。
表面の黒い部分は、コーティングのような感じである。

その一粒に、相当な量の草が圧縮されて詰め込まれている。
まさに、THE堆肥と言う感じだ。

細かい草の塊であるヤギのうんこが地上に落ち。
それを土壌菌が分解して肥料になっていく。

一気に堆肥化するのではなく、雨が降ってもうんこは形を崩さないので、ゆっくりと肥料になっていく。
ゆっくり崩れるように、表面の黒いコーティングがあるのだろう。

そんなヤギうんこだが、ヤギを飼うことによるメリットはそれだけではない。
なんと、ヤギは、畑の土壌菌に頼るだけでなく、自ら踏み込み温床を作り、うんことおしっこと敷き床の草で、堆肥を作っているのである。

通常、踏み込み温床と言うのは、落ち葉を大量に集め、一つの箱のようなものに入れ、そこに水をかけて湿度60%程度にして、踏んで踏んで踏みまくる。
そうすることで、熱を帯びて腐葉土と化し、堆肥化するのである。

これをヤギが自動で行う。
食べてきた草をうんこにして、それを、敷き床の上に投入。
そこに、おしっこをかける。
そして、踏んだり座ったり寝たりして踏み込みを行う。
これで、堆肥が出来上がる。

ヤギは、オートマティック堆肥生成生物なのである

ってことで、ヤギを飼うメリットは絶大なのだが、その反面、毎日、エサを食べさせるために連れていって、帰りも迎えにいかなければならないと言うめんどくささがある。
いつかは、この作業もオートマティック化したい。
美味しい草の生える草原を作ってやって、夕方には自動的に小屋に帰ってきて踏み込み温床で肥料を作り、朝になるとまた草原へ出ていく。
そうすれば本当にオートマティックなんだけどなぁ。

-ANIMAL:動物, MARK'S LIFE:日常, MOUNTAIN LIFE:山暮らし