二十歳の時、Amwayに出会った。
そのころ、地元浜松のホストクラブで働いていた。
そこに現れた二人のお客。
男性と女性。
ホストクラブなので、通常は女性のお客さんなのだが、たまには、男性も付き合いでくることがある。
僕は、まだ働き出して1、2ヶ月のペイペイで、リピート客になりにくいカップル客に付かされたというような感じだ。
カップルが来た時の鉄則は、半分以上の会話を男性側に振るというもの。
ホストクラブなので、女性を楽しませるために、女性中心に会話をするように感じるかもしれないが、それをやってしまうと男性がつまらなくなり、男性がつまらなくしていると女性が気を遣ってしまい、結果、あまり良くない状況になる。
逆に、男性が楽しめている場合、それを見た女性も嬉しくなるので、場が和み、うまくいくのだ。
そんなわけで、僕は、男性側を中心に会話をしていった。
当時、珍しいコンパクトな携帯電話を二人とも持っていた。
一番最初のショルダー型、二番目に出た弁当箱型、そして、三番目にはコンパクト型が登場。
とはいえ、まだまだ、一般人が手を出せるような代物ではなかった。
そんな携帯電話を所持しているということは、、、『金持ち』だろ。
と思ったのだ。
まあ、いくら地方とはいえ、ホストクラブに来るくらいなので、普通以上であることは確か。
そこで、会話のとっかかりとしても最適な質問。
「お仕事、何されてるんですか?」
だが答えは、いまいち曖昧な感じで「なんていうのかな?ネットワークビジネスっていうのかな?」という答え。
今であれば「ネットワークビジネス」と聞けば、すぐに理解できるが、当時、それも僕は19歳だったので、「なんじゃそりゃ?」と?しかなかった。
それでも、なんじゃかんじゃ、根掘り葉掘り質問してみたが、一向に理解できないし、そのお客さんもハッキリと答えることがない。
すると「興味があったら電話してきて」と言って、紙切れに電話番号を書いて渡してきた。
世間知らずな19歳は、『これはチャンスなんじゃないか!』と期待した。
数日後。
原稿を書いて、いざ電話。
待ち合わせ場所は、ボーリング場の駐車場だった。
『絶対、ベンツとかで来るだろ』と思っていたが、現れたのはワンボックスカー。
今では、アルファードなどは、高級セダンの代わりとなっているが、当時、ワンボックスカーといえば、商用車だった。
「あれっ?でも、まあ、仕事で使っているんだろ」くらいに納得させた。
そこからほど近い住宅地の中の一軒家に到着。
車から降りて入り口へ向かうと、、、
【Amway】というシールが貼られていた。
「な、な、なんじゃ、アムウェイかよ!」と思い、期待が砕かれ、落胆した。
しかし、自分から連絡している手前、ここで帰るというのも失礼すぎる。
とりあえず、一軒家の中に入る。
僕の落胆具合がよくわかったらしく「アムウェイ知ってた?」と聞かれ「はぁ、まあ」程度に答えた。
大概、二十歳前後になると、周辺の連中は、ネズミ講まがいのことに手を出し始める。
かくいう僕も、しばらく前に、浄水器のビジネスを友人から誘われ、やろうかどうしようか?などと迷っていた時だった。
当然、そうしたビジネスの頂点に君臨していたのがAmwayだったため、アムウェイ以外の連中は、アムウェイの悪口を言うのが常だった。
そのため、僕の中ではAmwayは、ロクでもないという印象があった。
機嫌の悪そうな僕を尻目に、その彼は、Amwayの説明をし始めた。
まずは、商品の実験から。
すると、実験なので当然なのだが、品質が良さそうに見える。
でも、なんでアメリカのよくわかんないメーカーの洗剤の品質が良いのか不思議だった?
聞いてみたところ、答えは、博士号を持った研究者の数が以上なほど多くいると言う。
それこそなんで?とも思ったが、でもまあ、洗剤なので、一つ買って自分の家で試してみればいい。
そうすれば、ウンチクを長々と聞くよりもわかりやすい。
次に、Amwayのビジネスプランの仕組みを話し始めた。
それを聞いた時、正直『これって、相当、賢いな』と思った。
このAmwayのビジネスプランを真似たものが、その他のネットワークビジネスである。
散々、Amwayの悪口を言いまくるけど、結局は、Amwayの真似で、勝てないので、悪口を言いまくっているだけだと言うことが後にわかった。
話を聞き終わった頃には、僕もAmwayビジネスをやろうと決めていた。
とはいえ19歳で、まだ出来なかったので、盲目的に初めて、あっという間に破産と言う感じではなく、数ヶ月何もせずに大人しくしてから始めた。
長くなったが、次ページから、ようやく、包丁の話。