どしゃぶりの雨の日に、家にいると、ずっと昔のことを思い出す。
たぶん、幼稚園児くらいだったと思う。
そころの住まいは、昔よくあった、平屋でふた部屋の借家。
どこにでもあった、何軒か同じ造りで、まとめて建てられていた、よく見た借家だ。
窓のすぐ目の前は、隣の家。
なので、景色などというものはなかった。
ある日の夕方、僕は、どしゃぶりの雨の日、外を眺めていた。
その時にこう思っていた。
「こんなに雨が降っているのに、僕は濡れないんだ
屋根があるっていうのは、何て幸せなことなんだろう」と。
どんなに雨が降っても、激しく降っても、僕は一向に濡れないことに幸せを感じていた。
過去生に、何かあったのだろうか?
家があって、屋根があって、雨に濡れない。
なんて、当たり前のことだが、そんなことを純粋に幸せだと思っていたんだな。
もちろん、今でも思ってる。
幼稚園児のころの感動や感激は、薄いだろうけど。
でも、実は、それと同時に、とても嫌なことも思い出す。
はっきりとわかったいることと、関連しているんだろうけど、よくわからないこと。
いろんなことがゴチャゴチャしているんだけど、とても嫌なこと。
だから、どしゃぶりの日に家で、雨を眺めていると思い出す。
とても幸せな気分ととても嫌な気分。
今では、嫌なことも薄れたが、幸せっていうのは、不幸の裏側にあるのかもしれないとも思う。
家を失った経験のある人は、家があることにとても幸せを感じられるだろう。
友人を亡くしたことのある人は、友人がいることにとても幸せを感じられるだろう。
お金がなくてとても困ったことがある人は、お金のありがたみをしみじみ感じることができるだろう。
・・・あんまり思い浮かばないけど、そんな気がする。
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