しばらく前に、森林の仕事ガイダンスというのに行った。
その関連で、今日も、林業就業相談会一日コースというのに参加して来た。
案内には、「林業就業希望の方」と共に「林業に興味のある方」とも、書いてあったので行ってみることにした。
実際に行ってみると、就業希望そうな若者が三人、そうでもなさそうなおっさんが、僕も含めて三人だったので、正直、少し安心した。
それに、主催者側の人たちも、僕らのように就業希望でなくても、快く受け入れてくれているようでよかった。
現在の林業というのは、僕や、多くの人たちがイメージしている林業とは、全く違っていると言っていいかもしれない。
イメージとしては、空気の綺麗な森の中で、チェーンソーで伐倒して、枝を払ったり、ワイヤーで引っ張ったり、という、どちらかというと、力仕事、体力勝負のように思えるが、実際の現場では、正直言って力も全く使わないし、体力も全く関係ないというのが現状のようだ。
何をしているのかというと、ほぼ全部が、どデカイロボットのような重機に乗って操作するだけ。
もちろん、そうではない現場もあるようだが・・・
もしかしたら、主催者側が考えて、「就業希望者が、これなら汚い・きつい・危険の3Kだとは思わないだろう」とでも思って、こんなものばかりを見せているのかもしれない。
しかし、僕の目には、全く林業というものが魅力的に映らない。
これでは、単なる作業員で、工場で働くのとなんら変わりはないのではないだろうか?
僕としては、熟練した技術を持つ、プロフェッショナルの仕事を見たいし、そう言った人たちの話を聞きたかった。
そのほうが、よっぽど憧れて就職したくなるのではないか?と、思うのだが。
僕が、ロッキー師匠に教わったように、難しい場所、難しい木を、いともたやすく自分の思い通りの場所に倒す技術は、「自分も出来るようになりたい!」という思いを抱かせた。
それと、同じように、夢や希望が薄れかけている若者たちを熱くさせるのは、プロの技であって、簡単に出来る仕事の紹介ではないのではないだろうか?
そんなことを思いながら、若干、林業という業界への寂しさを感じた。
僕としては、自伐型林業と言って、大型の機械などは使わず、チェーンソーと、ジャガー(林内作業車)と、トラックで、少しずつ木材を切って出荷するという、小さな林業の方に魅力を感じている。
二、三人で、週に一、二回、自分の山だけでなく、ご近所さんの山を間伐したりして、森を手入れしていくのだ。
お金にはならないが、山や森は生き返る。
山と森が生き返れば、川に魚が戻り、鳥が増え、動物も餌が多くなり、水が浄化され、菌や虫も生き生きしてくる、生命の連鎖が豊かになることで、人間もまた豊かになるのだ。
それが、本来の山の仕事であり、そこからの収入は、副産物であると考えるのだが、それは、単なる理想論に過ぎないということもわかっている。
だが、今のままでいいようには思えないのだ。
林業も、ほかの業種も。
実際、全国を旅して回っても、どこにでもコンビニなどの、チェーンストアの店舗が軒を連ねており、どの町の景色も、そう大差ない。
東京や大阪などの大都市の方が特徴的で、地方都市には、ほとんど面白みは感じないのだ。
僕のいる、写真館業界も同じ、大手のチェーン店が全国どこにでもあり、何の変哲もない写真を撮っている。
価格を安く見せかけて、実際には、高い金額を取るが、そうそう何度も利用するような場所ではないので、それでよしということになっている。
今の世は、プロフェッショナルが生き残っていけるような時代ではないし、育つ環境も少ない。
すべてが画一化され、消費者の側も、それでよしとしている。
お金というものが基準となっているし許雄主義社会では、それは仕方がないことなのかもしれない。
農家の人たちも、好き好んで農薬を使いたいわけではないらしい。
農薬を使わなければ、虫がついたり、形が悪かったり、痛んだりする。
そうした商品は、農薬がかかっていない証拠だったりするが、消費者が、わざわざ、農薬のたっぷりと効いた形がよく、ツヤツヤした商品を選ぶのだ。
虫が食ったやつが、一番うまいといっても、それを選ぶ人はいないものなのだ。
今日は、木材を売っている市場への見学へも行った。
木は、冬の時期に切る、それも、新月伐採の時期(下弦〜新月)に切るのが最も良いとされるのだが、木材市場で聞いたところ、年がら年中木を切って出荷しているのだそうだ。
なぜなら、年がら年中家を建てているため、冬の時期にだけ切っているのでは間に合わないということらしい。
家の作り手は、切った時期を気にしないのか?と、思ったのだが、どうやら、そんなことは気にしないようなのだ。
冬の時期に木を切るのは、水分が少なく、虫がつきにくいからなのだが、いつ切っても結局は、人工乾燥してしまうので、水分など関係ないということらしい。
しかし、人工的に乾燥させたものは、油分も抜けてしまうため、木のいい香りなどはしないらしい。
さらに、建築に使われる木材のほとんどは、無垢ではなく、集成材なので、木の質などが問われることは、無くなってしまっているらしいのだ。
聞けば聞くほど、夢も希望も無いような話ばかりで残念な感じがしてしまったが、林業だけでなく、どんな業界でも状況は同じようなものだろう。
やはり、僕は、ナンバー1ではなく、オンリー1でいたい人種なのだと、つくずく感じる。
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