この山に来て、今の小屋に住み始めた時から、うっすらと気になっていた。
ということは、ここにきて約6年もの間、毎日、ネズミの糞尿の匂いを嗅ぎながら生活していたことになる。
ただ、初めの頃よりも明らかに匂うようになってきたし、最近では、かなりヤバイと思えるほどだった。
そのため、意を決して、小屋を解体することにしたのだ。
この小屋は、パッと見、山小屋風ではあるが、外壁・内壁が木の板で張られているというだけで、基本的には、木造の在来工法である。
一般的な住宅では、外壁にガルバリウムなど、内壁に石膏ボードとビニールクロス仕上げというのが普通だ。
それが、板張りというだけである。
板は、真鍮釘というもので留められている。
これは、普通の釘と比べて見た目がいい。
まずは、この真鍮釘を抜いていく。
トンカチに付いている釘抜きではうまく抜けないので、ニッパーを少し開き、ネジの頭の下に押し込んで、テコの便利を利用して抜いていく。
石膏ボードとビニールクロスの場合は、破壊しなければ取れないが、板の場合は、丁寧に釘を抜いてあげれば、釘も板も再利用ができる。
その点がいいし、石膏ボードを破壊する場合、室内に家具などがある状態では、粉塵がすごくてとても出来ない。
まずは、板を一枚抜いてみる、、、
こりゃ、ダメだ〜!
完全OUTだった。
中の断熱材であるグラスウールは、食いちぎられ、ネズミの通り道が出来ており、そこら中に、糞と尿のシミが出来ていた。
その後、内壁の板を一面すべて外してみると、全面、完全にOUTであった。
断熱材は、ビニールで覆われているため、ビニールが切れていなければ匂いはしなかっただろうが、ビニールが切れたところから悪臭が漂っていた。
断熱材を、すべて外し、手前の角材も外し、中を、塩素系漂白剤で殺菌消毒した。
さらに、尿のシミが出来ている部分で、木材を交換できない所は、マルチツールで尿のシミを削った。
探ってみると、壁の下に床の発泡スチロール系の断熱材が触れる。
その断熱材を食いちぎり、壁の中に侵入していたことがわかった。
床の断熱材というのは、こんな風に壁からアクセス出来るものなのか?
多少、隙間があり、そこから空気を通すために、こうした造りにしているのだろうか?
よくわからないが、こうした隙間を狙って、ネズミが侵入してくるのだから、ここは塞ぐことにした。
塞ぐ方法は、最近流行りの、発泡ウレタンフォームである。
要するに発泡スチロールなので、ネズミにかじられる恐れはある。
しかし、隙間が覗いていなければ、多分、かじって侵入してくることはないと思う。
万が一、かじって侵入しようとしても入ることができないように、ウレタンの厚みは10cm程度のモリモリにすることにした。
ただ、後で考えたら、木材を適切な大きさにカットして埋めたほうが確実だった。
まあ、やってしまったものは仕方がない。
そして、壁の断熱材は、新しいロックウールを詰め込んだ。
ネズミは、ハーブなどの匂いの強いものが苦手なようで、塩素臭が漂っていれば寄り付きたいとは思わないだろう。
人間でさえ、強烈な塩素臭は、とても耐えられない。
そして、それを齧ろうとすれば、それは、死を意味する。
匂いチェックをしてみると、どうやら南側の壁全面だけだった。
4,5mの南側の壁すべてをやり替えた。
他の壁には侵入している形跡が見られないということは、南側だけが、壁と床の間に隙間があるのではないか?と考えた。
床下への入り口を発見
壁の中へは、床下から侵入されていた。
では、床下へはどうやって入っているのか?
基礎と土台の間は、金属の編みになっており、そこからの侵入は不可能だ。
だが、テラスの下は、他の三面と違っていた。
Oh! My GOD!
まったく、なんでこうなるんだ?
と、言いたくなるような造りになったいた。
まるで、「ここから床下に入って、床下から壁に入ってくださいね」と言っているような造りになっている。
こちら北側は、テラスの下から床の断熱材へアクセスすることが出来るようになっていた。
ネズミは、またも、ここの断熱材をかじって穴を開けて、床下に侵入していた。
こちらも、壁のところと同様に、床と断熱材との間に隙間があった。
やっぱり、隙間があっちゃいけないんじゃないのか?
隙間に空気を通すことで断熱効果があるようにも思えるが、なんか、違う気がする〜ぅ。
ってことで、床下への侵入路であるテラス下は、木の板で全て覆った。
床下へ入ってみる
まるでダンジョン。
真っ暗ではないが、ほんのりと光が入るだけの場所。
そして、やたら狭い。
この中に、本当に人間が入ることが出来るのか?
と思えるが、入ることが出来るように作ってあるよ、、、ね?
二回チャレンジするも、身体がまったく下に入っていかない。
正直、恐怖だ。
中で、身動きが取れなくなってしまう可能性もある。
そうなった時のために、iPhoneを持って入らないといけない。
とはいえ、床下への入り口にたたずみ続けて30分。
意を決して頑張ることにした。
三度目の正直である。
なんとか、工夫して、体を回転させながら、床下に潜り込んだ。
最も低い場所で、高さが25cmしかない。
30cm定規に満たない空間に体を入れるなんて考えられない。
めちゃくちゃ狭い。
床下は、この小屋が建ってから、きっと、一度も掃除されていない。
僕も、6年間の間に、当然、入ったことはない。
なので、25年間のさまざまなものが蓄積されている。
ここで、最も役立ったのが、ガスマスクである。
乾燥したネズミの糞粉などを吸い込むと、得体の知れない病気になる可能性があるらしいのだ。
ガスマスクをしていれば、まったく匂いはしないし、どんなに、埃にまみれても息ができた。
結局、床下には三回入った。
一度目は、堆積した諸々の掃除。
二度目は、床下からのウレタンの吹き付け。
三度目は、掃除機で、細かい塵や埃までも除去した。
ネズミは、ほんの少しの隙間を見つけて、かじって侵入しようとするので、隙間という隙間をウレタンで埋めておいた。
床下に入ると、施工が丁寧に行われたのか?いい加減に行われたのかがわかる。
この小屋は、悪くはないが、詰めが甘いというところだろう。
素人の僕がいうのもなんなんだけど。
見た目は、変わらないが、すごくリニューアルされた気分
6年の間、大掃除的なものをほとんどしたことがない。
それが、今回のチューチュー事件によって、半ば強制的に大掃除をせざるを得なくなった。
一見、不幸な出来事のように思えるが、実際には、リフレッシュ出来たことは、非常に価値の高いことだったのだ。
今までも、歳を重ねるごとに、薄々は気がついていたのだが、今回の事件も、ハッキリとマイナス面よりもプラス面の方が優っているし、見えない何かに動かされているような感じがヒシヒシとする。
「大掃除しろよ!」と言うために、ネズミの悪臭を増し、僕を大規模な大掃除に駆り立てた感があるのだ。
こうしたプラス面を享受するためには、嫌な出来事に対して真正面から向き合うと言うことが大事だと思っている。
愚痴を言って終わりにしたり、ストレス発散などと言って関係ないことをやるだけだったり、出来事をもたらした相手を責めるだけで終わりにしたりしていたら、その後に待ち構えている、プラス面を受け取ることはできない。
マイナスの出来事が降りかかってきた時には「なぜ、この出来事が起こったのか?」と言うことを、真剣に考え、真摯に向き合う。
そうすることで、その出来事の意図が見えてくるものなのだ。
結局、今回の出来事によって、とっても大きなプラスを手にした。
大袈裟に言えば、ネズミ様さまとも言える。