トラさんというのは、軽トラのこと。
この軽トラのトラさんにはナンバーがない。
使わなくなった車のナンバーは、返還して廃車手続きをするのだが、その際、再度ナンバーを取得できる状態にする一時廃車と、永久に廃車とする永久廃車の二種類があり、このトラさん、まだまだ走れるのだが、永久廃車になってしまっている状態で山に置かれていた。
それでも、山は広いし、ほとんど山の中でしか使わないので、ナンバーなしのまま使っていた。
ただ、公道に出ることができないことでの大きなデメリットがあった。
それは、整備工場に持っていくことできないってこと。
とはいえ、整備工場には、ローダーと呼ばれる車両積載車があるので、そいつで取りに来てもらえればなんということはないのだが、軽トラのちょっとした整備のために、取りに来てもらって、整備して、持ってきてもらうとなると、やっぱり運賃必要だよな。
そう思って、ずっと、まともな整備をしてこないでいた。
ナンバーがないということは、車検もないので、何かをしなければならないということがない。
基本的な整備である、オイルや冷却水などの点検も、したことがなかったのだ。
すでに、三年半が経過してしまったが、せめてオイル交換ぐらいはしておこうと思い立った。
幸いにも、カレヤン(Porsche911)のオイル交換を自分でやろうと思い、失敗して、結局やらずじまいで残っていたオイルがたっぷりとある。
エンジンルームを開けて、オイルを見てみると、オイル自体はちっとも減ってはいない。
まあ、色は真っ黒だけど、色に関しては、年月が経とうが経たまいが、それになりに黒くはなる。
で、冷却水を見てみる。
空っぽだ。
ラジエーターの蓋を開けてみると・・・全然入ってない。
なんと、トラさん、空冷で走っていたってことだ。
しかし、もっと、やばいことを発見。
ファンベルトが、全然、噛んでない。
ダラダラに緩んでいた。
ファンベルトの役割は、エンジンの力を、冷却するためのラジエーターに風を当てるファンを回すのと、バッテリーの充電のためのオルタネーターを回すという役割があるのだが、どっちも動いていなかったってこと。
ってことは、エンジンの冷却はちっともされず、バッテリーの充電もされていなかったということになる。
このファンベルト、実は三年前に苦い思い出がある。
トラさんから異音がしたことがあり、見てみると、ファンベルトがゆるゆるになっていた。
自分で部品を取り寄せても良かったのだが、その頃、ちょうど、紹介された車屋さんがいたので、車屋さんに部品の取り寄せを頼んだのだ。
僕としては、部品の取り寄せを頼んだだけだったが、ここまで持って来てくれるということで、単純に「親切だなぁ」くらいしか思わなかったのだが、整備士と一緒に来て、取り付けられてしまった。
「あれれ、自分でやろうと思ったんだんだけど・・・」
とは思ったが、時すでに遅し、部品代、工賃、出張費までかかってしまう結果となった。
しかし、その交換してもらったファンベルトが、三年を経過する前にダメになっていた。
トラさんは、山でしか走らないので、走行距離は100kmにも満たないだろう。
それで、ダメになるなんていうのは考えられない。
ベルトを見てみると、完全に擦り切れている。
原因としては、ベルトではなく、ベルトが接するプーリーの方に、何か問題があるのかもしれない。
または、付けてもらったベルトが、すでに劣化していた?なんてことはないとは思うが・・・
とりあえず、オイル交換、オイルフィルター交換、冷却水を入れて、ファンベルトも純正の新品に交換した。
(三年前に交換されていたファンベルトは、純正品ではなかったのだ)
軽トラなんかは、作りが単純なので、あまり壊れる箇所がないらしく、よっぽどでない限り、動き続けてくれるらしい。
そう思うと、永久廃車になってしまっていることがもったいない。
たまに、軽トラで荷物を運びたい時があるが、公道に出られないことでヤキモキする。
その度に「新しい軽トラ買おうかなぁ」と思うが、トラさんが動いてくれているうちは、なんだか、生きているのに、そのまま放置することに心が痛み、新しい軽トラを買うことができないでいるのだ。
新しい軽トラも欲しいけど、ユニックも欲しいしなぁ。
一人なのに、車が何台にもなるのも、良いことじゃないんだけど、、、と、悩みは尽きない。