FANがうちに来て、ちょうど10日。
常にビクビクと怯えていたが、いつまでも、小屋の中に引っ込んでビクついているだけでは、先がない。
そう思って、3日目あたりから、小屋から引っ張り出して、外を見せるようにしてきた。
1日目、2日目あたりは、地面に下ろすとすぐさま、物陰に走っていき、ビクつきながら隠れていたが、3日目あたりには、ウロウロとしながらおしっこ・うんちをするようになり、その後は、多少徘徊するようになったが、相変わらず、ほふく前進は変わらなかった。
そして、本日、ようやく、多少の時間であれば、外でも凛とした状態でいられるようになった。
で、僕は、ようやく、こうして写真を撮影する余裕が持てたわけだ。
僕と、OPERA(ヤギ)と、FAN(犬)の生活となったのだが、やはり、3人のうち、OPERAとFANは、同じ四つ足同士だからか、FANはOPERAと一緒に居やすそうなのだ。
なので、OPERAのヒモに、FANもくっつけてみた。
すると、2人仲良く記念写真が撮れたー!
凄い!僕としては、こんなに早く、こんな写真が撮れるとは思っていなかったので、ちょっと感激。
ただ、今日、一つ困ったことが起きた。
FANが、ハーネスの抜け方をマスターしてしまった。
今日1日で、2回ハーネスを脱いでいた。
センターから車に乗る時には、首輪から抜け出し、今もハーネスを楽々と脱いでしまう。
ってことで、明日からは、ハーネス&手製首輪にする予定。
現在、FANは、首輪もハーネスもつけていないので、FANが逃げる気であれば逃げれてしまう状況にある。
ハーネスを着けておこうかと思ったが、結局、逃げたければ、ハーネスを楽々脱ぐことができるので、意味はない。
それよりも、ハーネスを着けていると、邪魔らしかったので、何も着けずに過ごさせてあげたいと思ったのである。
10日経って、この場所が気に入ってくれて、僕のことを多少なりとも信頼してくれていれば、きっと、明日の朝も、ここにいるだろう。
FANの気持ちを想像してみた
なぜこんなにまでビクビクとしているのだろう?
初めは、よくわからなかったのだが、僕自身が、逆の立場として想像してみた。
僕が人間の子供だとして、狼の家に引き取られて来たとする。
狼は、僕を育てようとするが、僕は狼が怖くて仕方がない。
なぜなら、親や兄弟、他の人たちは狼に殺され食べられたのだ。
僕を育てた狼が殺したわけではなく、他の狼たちだが、それでも、同じ狼である。
僕も、いつ、この狼に殺されて、食べられるかわからない。
そう思えば、常に殺される恐怖にさらされるのは間違いない。
しかし、狼は、僕に専用の寝床を用意し、毎回、食事を出してくれる。
寝床は手作りで、最初は板張りだったが、しばらくすると人工芝になり、今はバスタオルが敷かれている。食事も半分手作りで少しだが肉も入っている。
そして、この狼はなかなか優しい。
少々お節介だが、よく話しかけてくるし、気になって仕方がないが、狼の寝床のそばに僕の寝床が作られている。
この狼と一緒にヤギが住んでいる。
ヤギは、どうやらかなり気楽に快適に過ごせているようだ。
狼は、よくヤギと話をしているし、遊んでいるし、ヤギがメェ〜、メェ〜言うと、メンドくさがりながらも面倒をみている。
ヤギに話を聞くと、なかなかいい生活ができているらしい。
そして、この10日間、一切の危険がない。
たまに、他の狼が来るが、話し声が聞こえるだけで、まだ、会った事はないので、油断はできない。
他の狼に殺されるかもしれない。
今日、狼が僕に説教をした。
と言っても、言葉がわかるわけではないので、雰囲気だけなのだが、こんなことを言っていた。
「死を恐れても意味がない。死は誰にでも来るし、いつ来るかもわからない。
明日、死ぬ可能性は、誰にでもあるのだ。
だから、ビクビク過ごしていても1日が無駄に終わるだけではないか?
それならば、明日死ぬとしても、今日を楽しく陽気に精一杯生きる方が良くないか?」
と、そんなようなことを熱く語っていたようだ。
まあ、一理あるが、恐怖というものは、そんな簡単に消せるものではない。
そうトラウマってやつだ。
体が勝手に震えてしまうのだから、どうしようもない。
それでも、今の所、なんとか大丈夫そうな予感はする。
こうして、想像してみると、なんとなく、FANの気持ちがわかるような気がしてくる。
意識して怖がっているのではなく、勝手に体が震えてしまうのだろう。
それでも、FANを見たときに「強い女」を感じたし、座っている姿など、凛として美しい。
顔からして、四国犬が入っている。
四国犬は、猟犬・闘犬なので、FANのDNAには、強さが刻まれているはずなのだ。
きっと、そのうちこう言う時が来るだろう。
「当時は、ビビリ犬だったのが、今では・・・」と。
逃げ出しちゃわなければだけど。