イノシシ被害拡大中

山に来た当時は、そこらじゅうにイノシシの形跡があったが、僕が住み着いたことによって、イノシシたちは、僕の居住範囲を避けて通るようになっていた。
それは、僕自身がいるということもあるが、木を伐採したり、電気柵を張り巡らしたり、山羊や犬を飼ったりしたからということが大きい。
しかし、最近になって、山に餌が少ないのか、徐々に、居住区に近づいてくるようになった。

原因の一つが、近頃は、木の伐採や、土木工事を行なっていないことにある。
動物たち、いや、人間の多くも同じだが、変化を嫌う傾向にある。

今まで安全だと思っていたルートが、木の伐採や土木工事によって遮断されたり、切り開かれたりする。
それが、毎日のように行われていれば、その辺りを避けて通るようになる。

イノシシが行動するのは夜。
とはいえ、イノシシたちが、真っ暗闇の中を赤外線のような目で見通せているわけではない。
イノシシなどの夜行性の動物たちも、人間と同じように、光がなければ見ることはできない。

そのため、イノシシが出没するのは、月の明かりが出ている時である。
特に、満月あたりに活動が活発化する。
あとは、雨上がり。
雨によって、土が柔らかくなり、ミミズなどの地中の餌を掘りやすくなるためだろう。
イノシシが罠にかかるのも、雨上がりが多い。
雨あがりの満月の夜など、最も、出没率が高いのだ。

その証拠となるのが、乱雑に掘り返された道の脇である。
通常、人や車が行き交う場所は、あまり安全ではないため、獣道を通って移動するのだが、時々、夜、道路に出てきている時がある。
しかし、道路脇をほじくり返すことは、多くない。

だが、ここ最近、道の脇がよく掘り返されている。
それも、僕が住んでいる小屋の目と鼻の先でやられた。
「こんなに、近くで、、、」
と、驚くほどだ。

秋には、大きな栗の木から、巨大な栗が落ちてきて、それを狙ってイノシシが来る。
その栗の木は、小屋から30mほど離れているのだが、今回、掘り返された場所は、それよりもずっと近い15m程度の場所だった。
麓から上に上がってくる町道の脇も、頻繁に掘られていたり、崖から落とされた石や岩が道に転がっていたりと、イノシシの出没が絶えない。

日本全国で、獣害の被害が増えていて、その被害は、山から里へ、里から住宅街へ、さらには、市街地にまでイノシシやサルが出没したなんてニュースも流れている。
山暮らし歴5年の僕の見立てでは、山に餌がないのではなく、人間が作っている野菜や果物の方が美味しいということを知ってしまったということが、まずは、原因の一つだ。

うちのヤギでさえも、一度、畑に入って野菜を食べると、やたらと畑に入ろうとする。
さらに、僕の小屋のところへ来て、テーブルやカウンターの上に置いてある野菜を取ろうとする。
周辺には、食べられる草が山ほど生えているというのに、少ししか生えていない畑の野菜や、小屋にある一つ二つの野菜を狙って来るのだ。
それも、僕に怒られるのがわかっていながら、ほんの少しの美味しい野菜を狙う。

イノシシやサルたちも同じ。
美味しい野菜を狙ってくる。

ヤギの場合は、僕に怒られるが、イノシシやサルは、畑の持ち主に怒られることもなく、さらりと野菜を奪っていける。
それが、里よりも、住宅街の方がリスクが低いことを知ってしまったのかもしれない。
そして、逆に、山の方がリスクが高いことも、、、。

山には、罠が仕掛けられている。
さらに、時にはハンターが来る。

しかし、里には罠はなく、ハンターもいない。
だが、畑には、柵が張り巡らされ、電気が流れている時もある。

それが、住宅街の家庭菜園や、平地の畑には、柵もなく、電気も通っていない。
それに、人間に見つかっても、人間は何もしない。
ホウキを持って振り回すだけとか、ギャーギャーと騒ぐだけである。

人間は、知恵があるが、その知恵を使った武器を使えない。
少し前に、ボーガン(クロスボウ)が、銃刀法に加えられた。
僕も、ハクビシン撃退用に買っていたのだが、そのまま所持していたら銃刀法違反になってしまうため、警察署に持っていった。
もしもの時の飛び道具がなくなってしまった。
あるのは、爆竹と、300円の音の出るおもちゃの鉄砲だけである。

こうなると、最初のうちは、音で撃退できるのだが、実害がないと知られたら、どんなに音を出しても効き目がなくなる。
一瞬は逃げるが、来ることを止めることはない。

獣害が増え続け、範囲が拡大している背景には、人間が獣たちに『舐められている』というところが大きいのである。

こうなると、銃を持てばいいと考えるかもしれないが、銃も実際には役に立たない。
銃が撃てるのは、日の出から日没までと決まっている。
しかし、獣が出るのは夜である。

ボウガンであれば、音が出ないため、夜でも打てるが、銃は音がデカすぎて夜は撃てない。
では、ボウガンの許可を取れば良いと思われるかもしれないが、今は、ボウガンの許可は、競技で使う人以外取れないし、設備のある場所でしか撃てないということになってしまっているのだ。

そんなわけで、獣に襲われても、対抗手段はない。
あとは、頑張って、弓を射れるように頑張るか、パチンコ(遊戯のパチンコではない)の腕を鍛えるかである。
あっ、一つ武器があった。
うちの犬「FAN」である。

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