それは、酔い止めである。
結果、1時間ほどで気分が悪くなり、朝飲んだコーヒーと共に、胃の中にある胃液の全てを吐き出した。
もちろん、釣りどころではないが、それでも、釣りに集中していると、そこそこ、気分が晴れたが、やはり、釣りを楽しむには、難しい状態であったことは確かである。
いまの山を販売していた不動産屋の会長さんが、船を所有していて、時々、船釣りに誘ってくれる。
今回も、MY竿や釣り道具を持参して、色々と試してみようと意気込んでいた。
いつも、お昼のお弁当は、どこかで購入していくのだが、山に来て3年が過ぎ、自然栽培で野菜を作ったりしていると、もう、売っているものを食べるのに、少し勇気が欲しいほど食べられなくなったので、今回は、お弁当を作って持参した。
売っているものが食べられないのは、今までは、保存料や添加物が原因だったが、最近は、正直言って、単に美味しくないというのが最大の理由になっている。
実際、世の中の多くの食品が、調味料を付けなければ食べる事が出来ないほど、食品自体に味がない。
しかし、今の僕は、ソースも醤油もケチャップも、ほとんどいらない。
必要なのは、塩くらいなものなのである。
ソースをかければ、どんなものでもソース味+ほんの少し素材の味。
日本料理は、全部、醤油味だし、オムライスにケチャップは、卵に味がないからだろう。
こうなると、ほとんどのものが食べられなくなってしまうが、実際には、食べなくたって生きていける。
食事など、人間が生きる上で、大して重要ではないのではないかと思うようになっているのだ。
エネルギーを食事以外から取り入れる方法を知らない人々は、単なるエネルギー摂取を目的に食事をするのかもしれないが、僕は、もう、食事だけからエネルギーを補給する必要はなく、食事など、ほんの少しで十分だし、食べなくてもどうということはない。
と、せっかく、気合を入れていたのだが、船に乗って、揺られている間に、重要な忘れ物に気がついたのである。
それでも、釣りの成果は、二人合わせて13匹。
そのうち、僕は3匹だけだったけど、それでも、それなりの成果が上がったことで、昼前には船着場に戻ってきた。
岸についても、胃の中が空っぽだったため、胃がキリキリと痛んだ。
何も飲みたいくないし、何も食べたくはなかったが、なんとか水を流し込んで耐え、連休中日のためか、渋滞の中をトロトロと国道33号線を南下し、1時間かけてようやく山に帰り着いた。
海もいいが、やはり、まだまだ山がいい。
ここは落ち着く。
13匹のサバとアジは、干物にした。