OPERA GARDEN(ヤギの庭:飼育場)のほとんど部分を畑にしてしまってから、OPERA GARDENの扉を開け放してあった。
そのため、OPERAは、昼でも夜でも好きなところへ行くことができた。
僕は、OPERAがどこで何をしていようと、なんの干渉もせず、いわば、ほったらかし状態であった。
しかし、OPERAの体臭が臭くなり、至る所にマーキングなのか?おしっこを撒き散らしていて、そこら中で、OPERAのおしっこ臭が漂うようになっていた。
これは、OPERAが、夜〜早朝に、フラフラとそこら中に行き、おしっことうんこをしまくっていることが原因だ。
夜、OPERAをGARDENに入れておいた時には、GARDEN内の土の上で、おしっこ、うんちをするので、おしっこの匂いは気にならないのだが、どこにでも行ける状態だと、アスファルトや砂利、雨の当たらない硬い土の上などにしてしまい、おしっこの匂いが染み付いてしまうのだ。
この悪臭をなんとかしなければならないと思い、数日前から、夕方になったらOPERAをGARDEN内に入れるようにしていた。
そんなわけで、今日も、午後5時前にOPERAを探す。
近くにいれば、大麦の入れ物をシャカシャカと振ってやると、大麦欲しさに、OPERAはささっとGARDEN内に入ってくる。
近くに見当たらない時は、OPERAを呼んでみる。
今日は、見当たらなかったので「オペラくーん」と呼ぶと、「メ〜、メ〜」と、なんだか、叫ぶように鳴いている。
なんだか、どっかに引っかかって取れなくなっちゃったか、登ったは良いが降りられなくなったか、どうかしたかな?
そう思い、声の聞こえる方へ、呼びながら近づいて行った。
声の聞こえた場所は、なんと、井戸の中だった。
OPERA井戸に落ちる
井戸には、蓋がしてあった。
その蓋の上に乗って草を食べようとしたのだろう、しかし、蓋が朽ちていたことと、OPERAの体重が重すぎたことで、蓋が割れ、落下した模様。
落ちてからどのくらいの時間が経っているかわからないが、午後3時頃までは、そばにいたのを見ているので、長くてもせいぜい2時間。
蓋を外すと、必死で頭を水面に出していた。
井戸の深さはわからないが、どうやら、OPERAの足が着かないほどの深さであることはわかる。
一瞬、OPERAが井戸の中で溺れているのを、BLOG用に写真を撮ろうかと頭をよぎるが、その間に沈んでしまったら助けようがないと、その考えは振り払い、すぐに、井戸の中に身を落として、OPERAのツノを掴んだ。
そして、まずは力一杯ツノを掴んで引き上げる。
とりあえず、上半身が水の中から出たが、それ以上引き上げられない。
一呼吸つくために、首が締まらない程度に、首輪に手をかけ、OPERAの体を壁に押し付けて固定し、ずり落ちてしまわないようにした。
今度は、首輪と前脚を持ち、もう一段階引き上げて、前脚をなんとか井戸の縁にかけた。
いつものOPERAの体力と筋力であれば、前脚をかけてやれば、体を引き上げるまではいかないにしても、踏ん張ることはできると考えたのだ。
もう一方の脚も掴んで、なんとか井戸の縁に掛けた。
とりあえず、これで、ずり落ちてはいかないだろうと考えたが、OPERAは、相当疲れているのか、まったく前脚に力が入っていない。
そして、後ろ脚もダラーンと下がっており、まったく踏ん張りが効いていない。
「これじゃあ、僕の筋力に限界にきたら、また落ちて行ってしまう」
現に、この段階でフルパワーを出していた僕の筋力は、さっきまでのパワーを失い、維持するのがやっとだった。
筋肉は、ブルブルと震え、ここから先、OPERAも力を使い尽くしてまったく自力で上がれないし、僕も、そこからOPERAを引き上げるパワーなど、もともとないのに、さらに、力が失われていた。
「くそー、どうすりゃいいんだ」
そう思いながら、策を練った。
すでに、腕の力は限界なので、腕力で引き上げるのは無理だ。
そうなると、他の筋肉を使うしかないのだが、どうやって?
閃いたのは柔道の投げ
ちなみに、柔道なんていうのは、中学の体育の授業以来やっていない。
それでも、なんとなく形はわかる。
OPERAの背中の毛と皮を、ちょいと痛いだろうと思うが、思いっきり掴み、僕は体勢を目一杯下げ、全身で伸び上がりながら、OPERAを投げ飛ばすように引き上げる。
OPERAの奴、めちゃめちゃ重い。
途中、一度はダメだったが、再度挑戦。
もうこれしか方法がない。
全身の筋力を一気に放出して、ぶん投げる勢いで引っ張り上げた。
そして、胴体が井戸の縁を通過。
そこまで来ればOPERAが自力で這い出せると思ったが、OPERAはまったく動けない。
仕方がないので、そのまま身を縮め、OPERAを投げ飛ばすように、井戸の外に落とした。
見えざる手の導き
もし、以前のように、夜も放ったらかしだったとしたら、朝まで気がつかなかったかもしれない。
夕方にOPERAをGARDENに入れるようにしたのが、ほんの数日前。
そのために、井戸の中に落ちていたのが、長くても2時間で済んだが、もしも、朝までとなると、16時間程度。
2時間で体力の限界に達していたことを思うと、16時間では、きっと死んでしまっていただろう。
OPERAのおしっこ臭がなければ死んでいたことを思うと、そんなことも、見えざる手の導きか?と思ってしまう。
こんな時、犬は、ワンワンと吠えて呼びに来ても良いと思うのだが、うちのFANは、これっぽちも呼びにこないんだよなぁ。
命の分かれ道
井戸から引き上げた後のOPERAは、とりあえず立てるし歩けるが、歩くのはしんどいようで、よちよちとしか進まない。
それでも、GARDEN内に入れておかないとと思い、OPERAを呼んで、なんとかGARDEN内へ入れた。
ヤギというのは、体調が悪い時など、人間や犬のように、グタッとするのではなく、じっと立っている。
以前、メスヤギのCHARが、毒草を食べてゲロゲロしていた時も、夜中、ずっと、外で立っていた。
今回、OPERAも、じっと立っている。
命の危険を感じているのだと思った。
相当、体温が下がっているらしく、ブルブルと震えているので、バスタオルで、ガツガツと拭いて水分を取ってやる。
小屋には、風が通り抜けないように、草をたっぷりと敷き、OPERAを小屋の中へ入れた。
小屋の中で、じっと立ち尽くすOPERA。
まあ、大丈夫だとは思うが、明日の朝、元気でいるか?少々、気に掛かりながら、OPERA GARDENを後にした。
井戸の蓋
井戸は、以前からあった。
OPERAが、井戸の蓋の上に初めて乗ったとは思えない。
きっと、体重の重さのせいで、今回、蓋が破れてしまったと思われる。
今回、OPERAを持ち上げてみて思ったのが、相当重くなっているということ。
実際はわからないけど、それでも、その体重の重さによって蓋が破れたのは確実だろう。
当然、蓋は強化して製作するが、きっとしばらくは、OPERAは井戸には近付かないだろうな。
翌朝、いつものOPERAに戻る
今朝、FANが何かに吠えるので目が覚めた。
時間は5:30
もしかして「OPERAが死んでるー!」とかの吠えか?
とも思い、すぐに服を着て外に出て、OPERA GARDENを見上げる。
すると、そこには、いつもの元気そうなOPERAの姿があった。
「なんじゃい、危機の知らせじゃないのか?」
どうやら、リスか何かに吠えていたようだった。
もうちょっと、役に立つようにならんかなぁ・・・
OPERA GARDENの扉を開けると、いつもの元気なOPERAがそこにいた。
やっぱり、ヤギは強い
人間だったら、風邪をひいたり、だるくて一日くらいはゆっくりと寝込みたいところだろうが、さっさとGARDENを出て、ムシャムシャと草にかぶりついている。
いつもよりも遥かに体力を消耗し、エネルギーを使ったんだとうかがえるような食べっぷりだった。
とりあえず一安心である。