描いた訳ではございません。素材です。本文中には、画像のような誘導員は出てきません。

僕が出会った、神業誘導員の昔話

五年半前に、愛媛に移住する前、東京の千代田区九段南に住み、さらにその前は、港区北青山という、大都会のど真ん中に居た。
ちなみに、そんな都会のど真ん中に住むところなどあるのか?とか、スーパーなど存在するのか?と、問われることが良くあったが、実際には、マンションはたくさんあり、意外にも大きめのスーパーもチョロチョロとあったのだ。
ただし、当然、価格は高額であった。

青山に住んでいた時に、よく行っていたスーパーでの面白い体験を思い出したので書いてみる。
そのスーパーは、大きく古い集合住宅の低層階にあった。
そして、無料駐車場完備!
周辺の駐車場は、1時間700円だが、スーパーの駐車場は無料だった!

当然ながら、駐車場は古くて狭い、ただ立体になっていて、それなりに駐車数はあった。
土地柄、徒歩や自転車でくる人の方が圧倒的に多かったと思うが、意外にも車でくる人たちも多かった。
買い物を終えて、手に持ったり、自転車のカゴに詰め込んで帰るのが嫌なのだろう。
もちろん、僕もそうであった。

歩いても数分、自転車で1,2分の場所に車で向かう。
集合住宅は古く、当然、当時作られたであろう駐車場は狭い。
しかし、時代は変わり、車は大型化。
さらに、そこら辺に住んでいる連中は、やたらとデカい車で来る。
そのため、駐車場には、誘導員が何人もいた。
もし、誘導員がいなければ、やたらと事故が起こってしまうであろうことは容易に想像できた。

その誘導員のおじさんたちの誘導が絶妙。
通常、駐車場の誘導員などというものは、「あっちに空きがありますよ」とか「向こうへ行ってください」程度なのだが、このスーパーの誘導員は、車両の大きさを確認して、駐車する位置を決める。
その際、運転しているのが、駐車がうまそうか、下手そうかもきっと見ていると思われる。
さらに、車種によっても誘導する場所が異なるようだった。

広めの平置きには高級車が並び、小型車や国産は、奥の立体に誘導されるように思えた。
僕の車(Porsche911 Carrera Cabriolet)は、サイズ的には大きくはないし、成人男性であるから運転が下手には見られないであろうけど、駐車位置の指定は、常に、平置きだったので、そう感じていたのだ。

まず、駐車場の入り口におじさん一人。
道路から入るときに、まずは一時停止。
歩道を塞がないように停められ、駐車位置の確保を別のおじさんが行う。

駐車位置が確保されたら、スロープを上がり次のおじさんの指示に従う。
誘導棒で、駐車位置が示される。
頭から突っ込むときは簡単だが、バックで入れる際には、おじさんが、しっかりと、どこに頭を向けて、どの程度曲がって、どこで止まるかなど、事細かに誘導してくれる。

これが、毎回、本当に絶妙で感心していた。
他の車の誘導を眺めていると、遅延なく適切に、切り返し一発で決まるように確実に誘導するのだ。

スーパーには、次々と車が入ってくるが、買い物を終え出ていく車も多い。
駐車場のスロープは、元々は、二車線が確保されていたのだろうけど、一車線分は、駐車車スペースとして使われている。
そのため、交互通行をしなければならない。

ここも、誘導員の腕の見せ所である。
出る車が出始めてしまってから、入る車をスロープに侵入させてしまってはいけない。
そのため、おじさんたちの連携がとても重要になる。

おじさんたちは、面倒な無線など使わず、ほとんどを誘導棒を使った手信号でコンタクトを取り合って行っていた。
それも、ベリースム〜ズである。

今まで、僕が買い物に行って、駐車場に入るのを待たされた記憶は皆無だ。
道路上に3、4台が停まっていても、ほとんどすぐに誘導されて、駐車場にスムーズINだった。
もちろん、平置き、入口まで徒歩10歩のような場所に停めさせてくれる。

本当に凄いおじさんたちだったことを思い出す。
しかし、そのスーパーは集合住宅ごと解体され、今はない。
あのおじさんたちは、新しい職場に移れたのだろうか?
それとも、もう引退してしまったか?

新しい仕事に着いたとしても、あれほどの誘導技術が必要な場所は、今では、もうほとんどないだろう。
確かに、大変かもしれないが、あの神業的な誘導技術は、仕事としても充実していたのではないだろうか。
今は、どうしているだろうか?

こんなことを書いていたら、また別のことを思い出してしまった。

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